インパクト21への米ポロ・ラルフローレンのTOBに思う
最近残業続きで、ちょっと書くのが遅くなってしまったのだが、4月16日(月)に新聞やネットニュースなどで報じられたアメリカのポロ・ラルフローレン社による、インパクト21へのTOBのニュースを、どう見るべきなのかな、とずっと考えていた。
こうなることは、正直、表参道ヒルズの横の直営店が出来た時点で、ちょっと予感していたんですけどね。
まず、「TOBは4月17日―5月22日の期間、1株あたり2600円で実施する。4月12日までの過去3カ月間の平均終値2140円に対し約21.5%のプレミアムを加えた額となる。買付け予定数は発行済み株式の約46.6%を下限とし、代金は240億1308万円を見込む。」(4月16日付けnikkeiBPnetより引用)という金額を高いと見るべきか安いと見るべきか。
こういうことを、本当は業界紙さんには本当はアパレルや流通業専門のアナリストに取材して書いて頂ければ嬉しいのだが、素人なりに推論するしかない。
さくらの感覚では、直近の平成19年2月期の売上高が306億円の企業さんなのに、うーん、これじゃちょっと気の毒なのでは?もうちょっと価値は高いんじゃないか、という感じで受け止めました。同社の株を持っておられるブロガーの方が安値を嘆いておられるコメントを書いておられたが、お気持ちは察するに余りある。
ただ、業界紙各紙の報道を見て感じたのは、親会社のオンワード樫山さんの首脳とポロ・ラルフローレン社首脳による共同の記者会見の受け答えで、オンワードさん側が非常に冷静なご対応をなさっておられるように見受けられたこと。
1つには、トラッド系のブランドが、特にレディスではダウントレンドなので今が売り時か、という判断もあったのだろうが・・・。
同社の場合、商社さんではなく、アパレルさんで、しかも国際的に見ても超大手企業さんだ。自前の有力ブランドも数多く有している。
自分で種から水をやり、ブランドをいくつも育ててきたという自信。それが冷静さの元なんだと思います。
自らファッションブランドを創造出来る企業なので、他所のブランドをM&Aする場合も、当然、「このブランドが売れそうかどうか」「クリエーションのレベルが高いかどうか」「ビジネスモデルが収益性にかなっているか」などのツボもよく理解できる筈だ。
そういう意味では、口銭商売でモノを右から左に流すだけのビジネスとは違い、アパレルという業態は最後まで残る、強いなあと感じたのが第2点目の感想。
第3点目。今回水面下でどのような駆け引きが行われたのかわからないが、一般論から言って、ライセンスブランドのライセンサー(本国側)とライセンシー(日本側)を比較した場合、どうやったって最後のところではブランドホルダーの本国側にはかないっこないな、ということを改めて感じたこと。
とにかく、ごねたもの勝ち、なんですよ。強気半分で「契約を解消しジャパン社を設立させてくれ」というカードを切って、日本側が思いのままになれば大成功なのだが、ランニングロイヤリティを0.5%でもアップすればそれでも勝ち、なんだから。始めから本国側が負けになるような交渉はありえないのだ。
そういう風に考えると、この難しいネゴシエーションを行うことによって中間利得を得る商社さんはともかく、アパレルにとって苦労してまで外資系のブランドを持ってくることが本当は良いことなのかどうなのか、という話になってくる。まあ、確かに日本のブランドでは絶対に出せない味や世界観があったりとか、日本人は海外かぶれの人間が多く海外のブランドも持っておかなければ取りこぼす売り上げが出てくるとかいうこともあるんですけどね。それと、特にオンワードさんとファーストリテイリングさんの場合は、海外進出をスピーディーに進めるための海外ブランド買収、という意味合いもあるから、一概には否定は出来ないのだが。
第4点目。今後、「ラルフローレン」のブランドがどのような方向に向かうのか。まだ不明な点が多いが、ちょっと予想してみよう。
懸念されるのは、日本独自のリプロがなくなり、アメリカ本国の企画がそのまま日本に入ってくるようになることだ。そうなると、アメリカントレッドの世界観は今までよりも明瞭になると思われるが、特にレディスの方で、現状の主力顧客の40代~60代のコンサバな女性客が離れてしまい、しかもヤングも思ったほどの人数は取り込めない、という最悪の状態になってしまう危険性がある。
もう1点私が心配しているのは、日本においてインパクト21さんの躍進の原動力となった、「百貨店の正社員に販売してもらう」仕組みを今後も維持していかれるのかどうか、ということである。
店舗によって差はあるが、私が見る限りでは、岡山に居た頃もそうだし、上京してからも「ラルフローレン」のショップの販売力は概ね百貨店インショップの平均値以上だ。店舗によっては非常に丁寧で細やかでハイレベルなところもあるように思う。
それを、「ショップは直営がよい」と教条的な考え方に立って自前の販売員に切り替えると、人件費は上がるは、昨今の人手不足で人は集まらないはで、大変なことになるのでは・・・。
と心配していたんですが、このnikkeiBPnetさんには、「既存店舗網を強化するためインパクト21の取引先である百貨店と協働する」(同サイトより引用)とあるので、その辺は当面は大丈夫なんじゃないかと思っております。
このブランドの場合、メンズはやはり魅力が大きいですよね。「ポロシャツ」という、ブランドのアイコンとなる強力な単品も有している。また、アクセサリー類(バッグ、ベルト、財布等)を強化し、場合によってはアクセサリ単体でのインショップ展開、という戦略もあり得るだろう。
そういう意味では、まだまだやりようによっては売り上げを伸ばすことは可能だという気がする。
これから米ポロ・ラルフローレン社が、どのような戦略で日本におけるブランドイメージのリノベーションを図っていくのか、大いに注目したいと思います。
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