TOKYO FIBER '07 SENSEWARE
面白かったですね、JCことジャパン・クリエーションの応援企画の「TOKYO FIBER '07 SENSEWARE」。皆様はもうご覧になられましたか?
さくらが熱烈応援している企業さんの素材がワンサカ使われているらしい、ということも小耳に挟んでいたので、いそいそと出かけて参りました。
いわゆる、婦人服地とか紳士服地のマーケットをどう活性化するか、という問題は、依然として深刻だと思うし、前にも書いたようにその問題に対しては別種の対応が絶対に必要だと思うのだが、そういうアプローチとは全く別の角度、すなわち、インテリア、建築、家電、アートなど、広義のデザイン分野で織物や編物の新しい使い方が出来ないか、という試みにチャレンジした意欲的な企画だ。
公式ホームページに、展覧会ディレクターの原研哉氏の動画インタビューがアップされているので、是非ご覧下さい。
◆TOKYO FIBER '07 SENSEWARE http://tokyofiber-jc.jp
参加作家は、15名/社。「社」と書いたことでご推測頂けると思うが、フリーのクリエーター、デザイナーに混じって、日本を代表するような異業種の大手企業さんが何社も参加しておられた。
そのうち、松下電器産業(株)パナソニックデザイン社さんの「自由になるカーペット」と、ソニー(株)クリエイティブセンターさんの「手のひらにのるテレビ」は、すぐにでも商品化が可能なアイテムなのではないかと思ったが・・・。
何より驚いたのは、(株)本田技術研究所さんの「Composition"F"」。車の表面を、世界一薄い合繊織物やら、まるで鬘のようにフサフサと波打ったパイルやら、様々な織物、ニットで覆っている。
「今まで硬かったものの表面を柔らかく」、そういう発想をしておられる出展者の方は結構おられたのだが、モノがモノだけに衝撃度は大きい。
一見、実現不可能かと思われるものだからこそ、無限の可能性を秘めているように思いましたね。
クリエーターさんの作品の中では、ナガオカケンメイ氏の「まるっこ」が「可愛いデ賞」、祖父江慎氏の「ショーツ・イス」が「ユーモア賞」という感じだったが、全体にポジティブな発想の作品が多い中、環境問題を意識した佐藤卓氏の「振るえる頭のデザイン」や、深澤直人氏の電磁波を遮断する「シールドカフェ」の視点が、この展覧会全体を良い意味で引き締めているように思いました。
建築家の方々は、服も家も人間を包み込むという点では同じで、服の延長線上に家がある、という発想をしておられるようで、成程な、という感じでしたが。
さくら的には、その発想を逆転させて、人間の体の内部に目を向けたデザインがあっても面白いのではないか、という気もしたんですが。あと、やはり、ファイバーというのは物質的な実体があるものなので、「時間」の概念への掘り下げは出ていなかったですね。音楽との組み合わせも。
それ以上に意外だったのは、「色」とか「柄」という点が、マテリアルの表面感の問題と比べて相対的に後ろに下がっているな、ということ。
改めて考えてみると、ファッション業界の色への関心は、家電とか自動車とかインテリアに比べてちょっとにぎやかすぎるのかもしれないな、と反省もさせられます。シンプルでベーシックな色は、確かに飽きがこないんですよね。
他にも面白いことはあって、ホンダさんやソニーさんの社内デザイナーさん達は名前は表に出しておられませんが、津村耕祐さんは社名なし、「ファッションデザイナー」の肩書きで参加しておられること。
前にも書いたことがあるんですが、ファッションデザイナーは建築家と並んで、自分の名前を表に出すことが比較的容易な職業なんですよね。
だからこそ逆に、他の分野のデザイナー、クリエーターと競作する場合は、自分の立ち位置というのを熟考する必要があるように思います。
今日たまたま私が会場に赴いた際には、この展示会を陰で支えておられる伊藤忠ファッションシステムのクリエイティブ・ディレクター、池西美知子さんもいらっしゃいました(^^)
この展示会、幾つか面白い仕掛けがあって、(「水」とか、「監視員」とか)、あまり書くとネタバレになってしまうので、是非皆さん直接ご自身の目で確かめてきて下さい。
最後に、会場では参加作家の方々にちなんだ書籍が売られていたんですが、さくらオススメ本を2冊ほどレコメンドしておきますね。
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ナガオカケンメイの考え 著者:ナガオカ ケンメイ |
『ナガオカケンメイの考え』は、ララポート豊洲の「カリモク60」で買ってきたのだが、まだ熟読はしていない。
でも、ペラペラめくるだけでも面白いんですよね。
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クジラは潮を吹いていた。 著者:佐藤 卓 |
今日会場で購入し、電車の中で半分読んだのだが、こちらもオススメ。
ちょっと前から、佐藤卓さんのことが気になっていたのだ(佐藤雅彦さんのことも別の意味で気になっているのだが)。イッセイミヤケさんの大阪の新店舗「エルトブ・ラップ」の空間デザイン、アートディレクションも手掛けられたようです。
ある意味、デザインの成否は、本質を理解してくれないクライアントをいかにして説得するかにかかっている、と痛感させられる一冊。
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