クリエーター、デザイナーはどうやって生計を立てればよいのか?
私のブログも、時折ヘビーな内容に入り込んでしまうのだが、デザビレこと台東デザイナーズビレッジの鈴木淳村長のブログには、時としてページを開いたまま「うーん」と考え込んでしまうような突き詰めて考え抜かれた内容が多い。
それだけ鈴木村長が物凄く真剣にデザビレの入居者のことを考えておられるのだ、ということが、強く伝わってきて、身震いがすることもある。
デザビレさんの入居者の皆様は、こういう話だけでなく、個別的なアドバイスも受けておられるのだろうから、非常に幸せだなと思います。
ただ、5月20日付けのテーマ「今の努力の延長にビジネスの成功があるのか?」には、私もベンチャー支援をやっていて同じようなことで悩んでいるので全く同感なんですが、読者の皆さんがこのままではあまりにも希望がない、と思われたらいけないと思うので、少し補足をしてみたいと思います。
鈴木さん言うところの、ハンドメイドで作品を作っている「クリエーター」は、非常に生活が苦しい、というのは、まず当たっていると私も思います。
ただ、この分野でも、例えば価格が40万円50万円近い良い宝石を使ったオーダーメイドのジュエリーなど、1点単価も粗利益額も高い商品を手掛けておられる場合は、食べていくことも不可能ではないようです。
いわゆる、単価の高い伝統工芸品を作っておられて、しかもそれがそこそこ売れていっている作家さんと同じですね。
次に、生産を外注する「デザイナー」についてですが、業種にもよるのかもしれませんが、社員をやとわず1人で年商3,000万円とか5,000万円挙げておられるケースはそこそこあるのではないでしょうか?
1,000万円どまりなのか3,000万円から5,000万円売り上げが取れるのか、それは、どうやら、店舗数の多い有力セレクトショップからの発注を得ているかどうかに左右されるようです。全て個店さんで30店舗とか50店舗と取り引きする、というのは、なかなか大変なことですから。
こういうデザイナーさん達は、企業内デザイナーとしてそれなりに経験を積み、仕入先や生産先、アパレルの場合は商社のバッカー、そして、売り先まである程度の当たりを付けてから独立されるケースが多いように思います。
これくらいの規模の売上高を挙げておられるデザイナーさん達は、プレス事務所さんとも契約して、雑誌への露出も図っておられます。ということは、プレス事務所さんにそれなりの謝金をお支払いしてもやっていける状態だということで、それなりに利益は出ている、と推察出来るのではないでしょうか?
もう1つ言うと、セレクトショップのゾーンを狙うよりも、商売を回すことがわかっておられる方なら、合同展示会「フロンティア」さんとか、渋谷109系のゾーンの方が参入はしやすいと思います。価格的に、買いやすい商品なので。
確かに、わが業界での独立は非常に厳しい。けれど、全員が敗者になっている訳ではなく、ちゃんとやっていっている人も存在する、ということだという気がします。
また、完全に自分のオリジナルブランド1本の収入では厳しいということはもちろんあるので、様々な方法で副収入を得たり、リスクを回避しておられるようです。
例えば・・・。
1.一般の人やセミプロを対象にしたクラフトスクールの運営
2.専門学校や大学の非常勤講師
3.企業の外部契約デザイナー
4.自分では在庫リスクは持たず、機屋さんや縫製工場さんなどとのダブルネームでのブランド立ち上げ
つまりは、独立前のツテコネ、人間関係を大切にしていく、というのが、ポイントのようですね。
少し話は変わりますが、生活費そのものを抑える為には、東京ではなく、地方にクリエーターやデザイナーとしての活動の拠点を置く、という方法もあります。
田んぼや畑をやりながら、自給自足的な生活+陶芸、とか・・・。
地方でクラフトスクールの講師もしくは専門学校の講師をやりつつ、教え子のファンを多数育成、地方百貨店や地方のギャラリー、地方紙など地方の文化人の間に人脈を作り、東京に逆デビュー(この事例、東京でも岡山でも何例か見ております。東京で勝つよりは、地方でぬきんでることは遥かに易しいです)。
また、ネットの達人で例えば学生時代にこしらえたアフィリエイトだけで生活費は隆々と稼ぎ、お金の心配なくクリエーションやデザインに全てを注ぎ込む・・・NHK特集の「“グーグル革命”の衝撃あなたの人生を“検索”が変える」ではないですが、さくらの知人でも「この人マジで働かなくても食べていけるじゃん」というようなスーパーアフィリエイターは存在しておりますので、今後はこういう事例も結構出てくるかも、と思っております。
結論ですが、私は「どうしてもクリエーターやデザイナーになりたい」という人がいたら、「厳しいけれど、本気でやりたいなら頑張ってみたら」と言います。但し、「3年なり5年頑張っても目が出なければ、堅気の仕事に戻る覚悟は常に持って置くように」とも言います。
日本の問題点は、学校さん、それも、専門学校さんはまだ良いと思うんですが、美大さん芸大さん関係が非常に無責任だというところにあるのでは?生徒をひたすら褒めるだけで、ビジネスの観点からの教育が欠落しているように仄聞しておりますので。
前にも書いたんですが、デザイナーを志す方は、何故デザインの中でもファッションを選ぶのか、ということを、しっかり自問自答してからこの世界に入るべきだと思いますね。
いい意味でも悪い意味でも、ファッションって、軽い業界ですよ。その軽さが、自分に合うのか合わないのか。軽い世界で、敢えて硬派な路線を打ち出すのか。
人間が身にまとうものは、生活に絶対に必要なものではあるんですが、この業界に存在する過剰な自己主張や、行き過ぎた贅沢、ごみの問題などなど、一度は真剣に突き詰めて考えるべきでしょう。
収入の点から言っても、平均値を取れば建築家とか工業デザイナーとか、あるいは電博に就職した方がはるかに高いでしょうし。
もう1点、本当は、アーティストとか、個の個性を表現する真のクリエーターというのは、大切にされてしかるべきなんですが、欧米と違って日本にはパトロンが少ない。
これから社会が成熟してくれば、少しは変わってくるかもしれませんが。
でも、これから世の中を変えていくのは若い皆さんだと思うし、頭を柔らかくしてうまく稼ぎながらクリエーションやデザインを続けていく方法を一緒に考えていきましょう。
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解決策をあまり提示しないのが私の悪いところなのですが、両国さんに助けられました。
私も、「厳しいのを前提に、どうやって成功への筋道を立てるのか」が大事だと考えます。
成功のイメージは人それぞれですが、成功を目指す意欲があるなら、それを応援するというのが我々の仕事なのだと思います。
投稿: 鈴木村長 | 2007年5月22日 (火) 08時39分
鈴木村長、こんにちは!
デザビレさんは、実は成功事例のカタマリなのに、隠しちゃ駄目ですよ(笑)。
うちもそうだと思いますが、基本的に厳しい入居審査を潜り抜けてこられた方は、小成功、中成功くらいは、大丈夫だと思います。
その他、世の中に沢山いらっしゃるであろうファッションで起業したい方々の面倒までは、さくらは見ようとは思っておりません。うちの入居者が第一優先です。
そこが、優しくて、しかも優秀でいらっしゃるので大きな視点で物事を考えておられる村長と、びしっと線引きしてしまう私の違いかもしれませんが・・・。
仮に失敗したって、それが次の成功の素につながるのなら、良いのでは?(人ごとだと思って、無責任かもしれませんが)。実行されるのは、最後はご本人。そして、人生、山あり、谷ありですよ。
ブログを読んで、迷いが生じた方は、東京以外にも様々な起業家支援機関はございますので、そちらでご相談されればよいと思いますヨ。皆さん、親身になって相談に乗って下さいますので。
投稿: 両国さくら | 2007年5月23日 (水) 00時51分