トーガ原宿店に古着店舗「TOGA XTC」オープン(H19.7.13MODE PRESS他)
MODE PRESSさん他、業界紙各紙が報じていたこのニュースがちょっと気になって。
「コム・デ・ギャルソン」さんとか、「イッセイミヤケ」さんのエルトブテップなど、デザイナーズブランドがショップをセレクト化するというか、セレクトショップを立ち上げる動きが相次いでいるが、
川久保玲さんや三宅一生氏などより世代的にはかなり若い古田泰子デザイナーの新規事業は、それらを更に一歩進めたかのように私には見えた。
さくらは若い人達によく言うんですが、古着店とか古着のリメーク品を集積したショップというのは元手が少なくて一番成功しやすい業態なんですよね。
ただ、最近は、ヨーロッパのヴィンテージのラグジュアリーブランドのような掘り出し物の在庫は向こうでも尽きてきているのでは、という話もあるようだし、日本国内の古着店も店舗数が増えてしまったから、何らかの特徴を出さないと競合は厳しいだろう。
なんだけど、「トーガ」さんの古着店って、ほんと、大胆不敵というか、昔ならデザイナーさんがそこまでやっちゃっていいの、というとこまで行っているというところが凄い。
記事には、「デザイナー本人のセレクト」とある。多忙なデザイナーがそんなこと出来るのか、といぶかる向きもあるかもしれないが、実はデザイナーさんの多くは過去のアーカイブをデザインのリソースにするため、元々古着の収集が趣味、という方が多いようなんですよね。(もっというとラグジュアリーブランドさんなんかは軍物の古着を組織的に買いあさっているという話も聞いたことがあります)。
趣味と実益を兼ねたバイイング、丁度良いではないですか。
それを更に、「トーガ」の新品とミックスして着て下さいよ、と言わんばかりの、同じ敷地内への出店。
古田デザイナーの中には、ひょっとしたら今の時代富裕層は別にして、若い子の洋服にかける金銭的価値とエネルギーが、もう昔のように戻ることはない、という諦念があるのかもしれない。
日本がだんだんヨーロッパに近づいてきて、若い子は若い子らしく、お金もないのだから、チープシックでさりげなく、そして、みんなの興味関心は、ファッション一辺倒ではなくて、いろいろなところに分散している、ということを、肌で感じておられるのではないだろうか。
ただ、同じチープな価格のものであっても、ファストファッションではなくて、古着をセレクトしてきた、というところに、私は一味違うデザイナーさんらしいセンスを感じましたね。
デザイナーの田山淳朗氏が、よく、「時代と地域が重要」とおっしゃられますが、ファストファッションも「ザラ」とか「H&M」は日本発ではないので、感性やトレンドの違いがあって面白い(時には日本では売れにくい)んですが・・・。
古着は、日本の古着でなければ、地域だけでなく、時代が違うんですよ。
時代って、時代の空気感って、過去の時代を経験してきた人間でも過去にさかのぼって再現することは絶対に出来ない。「80年代調」のデザインは出させても、80年代には絶対に戻れない。
その、どうしようもない空気感のズレ。それが、古着には沢山詰まっていて、そして、その古着をその時代に着用していた人が残した身体の痕跡までもが固着している。
デザイナーと呼ばれる方々が古着に引き付けられてしまうのは、服が単なるモノではなくて、時代と個(それも、精神のみならず、身体までも)をリンクさせる存在であるということを知っているから。
そして、過去の時代の空気感への想像を膨らませつつ、来るべき近未来(半年後~数週間後)のイメージを設計するのが、デザインという仕事。
その作業は、非常に大きな労力を要するものなんですが、一昔前の大御所さん達とちょっと違うのは、お客様にはそのしんどさとか、それと裏腹の上昇志向とかの共有は求めず、自由に楽しんでもらいたいという姿勢。
その結果、オリジナルのブランドが選ばれなかったとしても、というところまでの覚悟があるのか、それとも、「きっと選んで買って頂ける」という信頼とか、自信をお持ちなのか。きっと、どこかの雑誌か業界紙さんが、その辺はデザイナーさんにインタビューして下さるのではないかと思います。
細かいことを言うようですが、土地代(もしくは借地料?)の出店コストも安く上げておられる、良いビジネスモデルなんですよ。古着の売り上げだって、立派な売り上げ。直感的に面白いとお感じになられて始められただけなのかもしれませんが、逆風のマーケットを冷静に見ておられる。過去(古着)を見つめなおすことで、未来(オリジナルの自分のブランド)の位相を確かめようとしておられるのか。そういう行動を取られること自体、時代性を捉える感覚が、シャープなのだという気がします(なんて、私のようなものが評論家風に申し上げること自体が非常におこがましいんですが)。
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