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2007年8月23日 (木)

山崎光弘著『現代アパレル産業の展開ー挑戦・挫折・再生の歴史を読み解くー』(繊研新聞社刊、定価2,000円)

最近はそういう風に感じることがほとんどなくなったが、業界紙を読んでいて、記事に入った署名を見て、「突出したレベルだな」と感じる記者がたまに存在する。面識はなくても、文章を読めば大体のことは想像がつくのだ。この本の著者、元繊研新聞記者の山崎光弘氏のことも、岡山に居た頃からそんな風に感じていた。

上京し(財)ファッション産業人材育成機構・IFIビジネススクールに入学し知ったことだが、果たして山崎氏はGAPの株主総会に出席し、新聞記事を執筆するためにSPA(製造小売業)という言葉を造語したという、業界内の立志伝中の人であった。

「一般紙の記者に勝るとも劣らない」という褒め言葉に、かつて強く憧れていた。今や「新聞記者」という言葉そのものが10年後には死後になっているかもしれない時代を迎え、私は後輩達に「記者であってもブランドの立ち上げや実店舗もしくはネットショップの1軒くらいは切り盛り出来るくらい実務に精通していないと、書くことしか出来ない記者の大半は生き残れない可能性が高い」ということを説いているが、この本は筆一本で生きていけた幸せな時代に、世界を飛び回り、まさに、一般紙の記者に勝るとも劣らない八面六臂の活躍を繰り広げてきた大先輩の労作である。

記者と言っても、その人がどんな分野を担当していたのか、組織(会社)の中でどのような地位にあったのか、どういう問題意識をもって業界を見ていたのか、そういう「立ち位置」は一人ひとり違う。同じ時代を描いても、内容は相当に違って来る筈だ。

山崎氏の著作のユニークさは、アメリカ、ヨーロッパと日本の間を自在に行き来し、ファッション業界の歴史と国境を越えた企業活動の相関関係を巧みに描写しているところにある。業界紙の記者は、一般的に、取材対象との距離が近すぎ、自分と特定業種の経営者を一体化し、マクロ的な視野で物事を見て冷静に分析出来なくなってしまう傾向にあると思うが、山崎氏の場合は海外取材を数多くこなしてこられた経験が、それを防いでいるように思う。日本の企業の長所及び短所を冷静に、しかし、愛情を持って見つめておられる姿に、業界内の方々ならば共感を覚えられる筈だ。

同書では、単に、70年代の事例が時系列順にズラズラと並べて取り上げられている訳ではない。明らかに、「2007年の今という時代のアパレル業界が直面している問題にとって、参考になるであろう過去の事例」を意識してピックアップしておられる様子が見て取れる。

それは例えば、現代の官民一体型JFW並びに、JETRO支援による川中中小企業の海外進出支援事業に対する暗喩としての、80年代初頭のJFF(アパレルのNY進出事業)、あるいは、現代の日本の百貨店の合併再編劇に対する、80年代後半のアメリカのメーシーズ対ブルーミングデールズの買収合戦等々。

それともう1つ、本書が問題提起していることとして、ヨーロッパのラグジュアリーブランドの巨大化、日本市場への進出(高価格帯ゾーンでの寡占化)の問題がある。

ラグジュアリーブランド、アメリカ型SPA、ヨーロッパ型SPAの伸長と、百貨店と卸型アパレルの衰退、そして、この本には取り上げられていないが、個人専門店の衰退、その間隙を縫って、ファイブフォックス、オンワード樫山、ワールドなどのアパレル型SPAと、それとこちらもこの本では紹介されていないが、ユニクロ、ポイント、ハニーズ等の小売り発のSPAが大きく伸びていく・・・90年代以降の状況が、この本の後半部分にはリアルに描写されている。

惜しむらくは、山崎氏が記者の現場を離れた2000年以降の部分が、迫力を欠くものになっていること。特に、インターネットの登場がファッションビジネスを大きく変容させつつあることを、アメリカの事例を中心に取材し日本国内に紹介するのは、本来は繊研新聞さんの責務であった筈だと思うが、全くフォロー出来ていないのが、ちょっと残念です。

また、この本の視点も、あくまでも一つのものの見方であって、別の角度から業界を見れば、違う論点も沢山出てくると私は思う。一例だが、日本においてラグジュアリーブランドがここまで大きく伸長した理由の一つに、高学歴な女性の活用があり、対照的に日本のアパレル業界では長年デザイナーやパタンナーなどの専門職には女性を起用しても、マーチャンダイザーやマネジメント職には全く登用しなかったということなど、「何が善で何が悪か」「何が進歩で何が後退か」ということを単純に決め付けることは難しい。

今はたぶん、中国などのアジアに向けてこの本を翻訳したものを発売すれば、一番喜ばれるんでしょうね。移民を認めるなどの社会政策の転換がない限り、急激にシュリンクし続ける日本市場では、過去の成功体験は最早通用しないかもしれない。

また、ファンドの進出などの話は、現場で実務に携わっている人達には少し遠い話で、前述のラグジュアリーブランドの巨大化の部分とも共通することだが、そういう「ファッション」と「マネジメント」の分離、マネジメントはファッション業界出身者ではなくマネジメントのプロが担う、という風潮が、昔のように業界で一旗上げたい、というような若い人がどんどん入ってくる活気ある雰囲気を失わせる一因となっているのかもしれない。

若い皆さんには、オバサンやオジサンの意見や書評を読むこと以上に、ご自身でこの本を読まれて、自分なりの問題意識を育てていかれることをお勧めしたいという気がしております。

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