日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW推進機構)さんが、ビッグなプロジェクトを立ち上げるようだ。来年3月に開催される第8回JFWに向け、日本だけでなく全世界から有望な新人を日本に呼び込もうという「新米クリエーターズプロジェクト」である。
◆スポーツ報知「若手デザイナー支援『新米クリエーターズプロジェクト』発足」(H20.4.21)
国の税金を1億円投じることの是非はさておき、資金不足に悩む若手デザイナーさん達にとっては、願ってもない朗報だろう。
こういう時は、「私やりたいっ!」って早く手を挙げた者勝ちだとさくらは思いますね。競争倍率も高いだろうから、トライしても駄目な場合もあるだろうけど、「僕より優秀な人はうちの学校には沢山いるんで」なんて変な遠慮はしない方が良いと思う。
駄目だったら駄目で、さっと素早く気持ちを切り替えて次のチャンスに向かえば良いのだ。駄目だった人が必ずしも実ビジネスの世界で負け組、選ばれた人が勝ち組になるとも限らないのだから。ただ、選ばれれば、普通なかなか経験できないことが経験できたり、マスコミやバイヤーさん達から注目されたり、国内外のファッション業界の有力者ともコネクションが出来るので、しんどくても挑戦してみる価値はありますよね。
さくらがちょっと思ったのは、選考の第1過程で「海外ファッションスクールの教授か国内ファッションスクールの学長の推薦」が条件になっているのだが、「1校3名まで」の制限がかかっていること。
第2次審査よりも、むしろここの部分で選に漏れた方々から、「○○先生は△△君と××さんをひいきしている」云々といったお声が出てこないかな、という気がするのだが。絶対に学長や教授が公平だと言い切れるのか、何をもって公平というのかは難しいと思うし、有力校の場合は1学年だけでも3人どころじゃすまない人材を抱えておられると思うので・・・。
何らかの形での敗者復活の方法を用意してあげればよいのにな、とちょっと思います。
さて、どんな人材3名が選ばれるのか。既に多少なりとも国内外での動きが注目されはじめている方になるのか、それとも彗星のごとく本当の意味でフレッシュな人材が現れるのか・・・審査を楽しみに待ちたいと思う。
ところで、今日書きたい本論は別にあって・・・。
ご提案なのだが、このプロジェクトにもう1つ、「新米・企業ブランド部門」を加え、コンペをやられてはどうか、ということである。
この「新米・企業ブランド部門」には、一切の補助金・税金は使用しない。参加対象者は、ファッション業界のアパレルや小売業、商社さんなどで、企業として新ブランドをデビューさせようというもの。
そういうブランドのショーもしくはインスタレーションを定められた日に行うことを義務づけるが、その前後にWebやケータイ、雑誌、TV等を活用したどのようなプロモーションを行おうが自由(当日同時並行でやってもよい)ということにする。もちろん、ブランド立ち上げにいくら経費をかけようが自由だ。
審査員は、異業種の経営者や芸能人など、ビジネスとファッションに関心のある方々による特別審査員と、一般の方々で構成する・・・。
というと、なんださくらさん、今更東京ガールズコレクション(TGC)の真似ジャン、と笑われそうなのだが、1点だけちょっと違う条件をこのコンテストでは課したいんですよね。
それは、「日本の高付加価値なテキスタイルを使用すること」である。
前々から思っていたのだが、何故今の日本のマーケットでは、ヤングのトレンディなマーケットはチープな海外素材、DCは国内高級素材・・・と判で押したように決まっているのだろうか?
ヤングでも富裕層の女の子に向けて、例えば「セシルマクビー」風のシャネルツイードのミニスーツが、「シャネル」クラスとまではいかなくても尾州の産地の高級ツイードで開発される・・・というのだって、大いにアリ、の筈なんですよね。
ファッションのプロの方々が、それなりの資金を投じ、個人デザイナーを担いでもデザインチームという形でも良いから、全ての思い込みをとっぱらって、「これは国内で(海外で)売れる、商売になる」ということを狙ったブランド開発を行い、競い合ったら、既成概念に囚われない斬新な発想が出てくるのではないだろうか?
前々から思っていたのだが、今、日本のクリエーターズブランドで成功しているものには幾つかのタイプがあって、レディスの場合はa.「エキセントリック・キューティー」とでも称すべき、普通のカワイイでは満足できない、ちょっとイっちゃってる可愛さを表現したブランド(「トーガ」「ドレスキャンプ」「アンダーカバー」など、「ミナ・ペルホネン」もその亜種か)、b.トラッドベースのブランド(「サイ」「マンド」「グリーン」など)、c.単品に強いブランド(「サカイ」やデニム系のブランドなど)の3つに主として集約されると思うが・・・。
実はaの「エキセントリック・キューティー」のカテゴリについていうと、TGCと東コレやパリ・コレの中間の部分に、大きな市場の穴があるように私は思う。
企業は戦略的にこのゾーンを攻めるべきなのではないだろうか?
先日WWDさんのTGC特集を読んでいて面白かったのは、あるTGC参加のブランドさんで建築家の青木淳氏の事務所のご出身のデザイナーの方がいらっしゃったのだ。これはもう完全に時代の流れだろう。すごく柔軟でみずみずしい発想ですよね。TGCサイドから東コレ方向にシフトする、というのもアリだし、その逆というのも、今の若いデザイナーさんやMDの方々なら案外面白がってやってのけられるように思うんですよね。
もう1つ、これまでの日本の企業さんが苦手だったのが、「ライフスタイル提案型」=「ラルフ・ローレン」とか「アルマーニ」タイプのブランド開発だ。
これこそが、本当は一番ビジネスとして儲かるゾーンなんですけどね(最近、「ケイタマルヤマ」&藤巻幸夫氏のコンビがこういう領域にチャレンジされると明言なさっておられるので、どのような展開になるのか非常に個人的には楽しみにしているのだが)。
他にも、「音楽や映画、アートなどのカルチャーと同時発信型ブランド」などいろいろ考えられるだろうが、今本当に必要なのは、売れない日本国内のマーケットばかりを見て価格を下げることばかりにやっきになっている大手や中堅の企業さん達が発想を変えて、外に向かって「高く売る」という発想で新しいチャレンジをすることではないだろうか。本当にコンペが必要なのは新人さん達ではなくて、むしろ企業さん達の方なのではないかとさくらは真剣に思うのだ。
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