繊研新聞の記事「早過ぎるクリアランスセール」を読んで
昨日、ビッグカメラに行ったついでに、セールに突入していたラゾーナ川崎内のセレクトショップ「カーヴクロッシェ」で、半額になっていたイタリア製のベルトを買ってきたりなんぞしたのだが・・・。
同じ昨日、6月28日(土)付けの繊研新聞さんの記事「早過ぎるクリアランスセール」を読んで、「嗚呼、やっぱりこういう記事が出てきたな」と思ったんですよね。確かに、ここに来てのファッション業界をとりまく不況感、尋常ではない感じがあるので。
繊研新聞さんの記事では、大手アパレルの数社の首脳の意見を取り上げ、成熟社会においては欧州のようにセールの開催時期を国が規制すべきではないかという意見と規制慎重派のアパレル団体の長の意見を列挙し、「議論が必要なのではないか」と結んであった。
ただ、この記事を読んで、皆さん「何か変だな?」と思われませんでしたか?
ここに登場しているのは、アパレルさん(それも大手)ばかりで、セールの時期について決定権を握っている筈の、ファッションビル、駅ビル、郊外型ショッピングセンター(SC)、百貨店などの意見は一つも掲載されていなかったので。
記事を読みながらさくらが感じたことはもろもろあって・・・。
・セールの開始時期を規制し、一斉に始めることにすれば、強い商業施設、強いブランドが有利になる。抜け駆けは、弱者が少しでも売り上げをかせぐための術。商業施設サイドは、そのことを良く知っている(そして、自社の競争力からいって、早くからセールをしなければいけないポジションなのか遅めでも売り上げが取れるのかも自ら自覚している)ので、たぶん誰もこの問題については声を上げない。
・アパレル、セレクトショップなども、人気ブランドは他よりもセールの時期を遅らせたり、セールは別会場に持っていって元売り場はプロパー販売という形にしても、十分売れている。
・規制賛成派の顔触れを拝見し、昔は百貨店内でヤング向け商品を百貨店プライスより低めの価格設定にして他社の売り上げを奪取する・・・という戦略が有効だったが、最近は百貨店さんそのものへの来店客数がどうしようもないくらい減っているので、そういう戦略の企業さんは厳しいんだろうなぁ・・・と思ってしまった。
要するに、繊研さんが取材不足なのではなくて、現状ではまだアパレルさんだけが云々言っておられる状態だとしたら、現実の問題として国の規制なんてことは起こり得ないんじゃないか、というのが、さくらの考えであります。
私は何事にも「絶対」はない、というスタンスなので、あまりにもドラスティックな変化が業界だけでなく雇用の喪失ということも含めて消費者サイドにも悪影響を及ぼすとなったら、規制も検討の必要ありか、とも思ったりもするのですが・・・。
99%の基本は、やはり、各企業さんが良識を持って判断すべきなんじゃないかなぁ、と思いますね。
この記事を読んで思ったことをさらにもう3つ付け加えておくと・・・。
・早期化したセールの後の売り場が荒れている、という問題意識には、同感できるところは大きい。対外国人観光客ということを考えても、日本の魅力は「安全、安心、清潔、繊細な美意識に基づく文化やサービス」にあると思うので、セールの開催時期の問題とは別に、処分期でもVMDを美しく保つための研究・指導は不可欠だろう(アウトレットでもVMDにきっちり気を使わなければならないのと同じである)。
・欧州の強い流通業に対する規制が、結果的に国内のほんの一握りの大手企業を「外」に向かわせ、グローバルな大企業へと成長させる原動力の一つになった面は否めず、どんなに規制しようが、業態としてのポテンシャルと成長意欲の高い企業は、海外進出によって成長していく(それと同時に、国際競争への感性を鈍らせた大多数の弱者を生み、何年か先に規制が緩和された折には取り返しのつかない状態に陥ってしまう・・・)。
・100円ショップやしまむら、一部の婦人服やカジュアル専門店、古着店、アウトレットのように、セール期以外も低価格の業態が沢山存在する時代に、規制がどれだけ意味があるのか?また、ネットやケータイでも特にレディスでは常時ロープライスの有力店は幾つも出てきており、そうでないお店もメルマガを使った固定客へのシークレットセールは簡単に行える。
さくら的には、昔と競争環境が変わってはきたものの、紹介期にしかファッション商品はほとんど買わないような富裕層やファッション好きも日本には依然として存在するし、定番的な商品の場合は一切セールなしというのもありだろうし、必ずしも「早く安売りしたもののみが勝つ」というほど市場は単純ではないと思うのだが・・・。
この記事を読みながら、中小の個店さんと違って、大手さんの場合は、「そもそも出店そのものを絞って、売れそうな商業施設にしか出店しない」ことが何よりも肝要なのではないかということを改めて感じましたね。
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