不況を逆手にグローバルな事業拡大狙うオンワードHDとユニクロ(ファーストリテイリング)
今日9月5日(金)付けの繊研新聞さんの2面と3面に、先日ジルサンダー買収を決めたばかりのオンワードホールディングスさんと、2010年度にグループ売上高1兆円の目標を掲げるユニクロさんの記事が並んでいるのを見て・・・、
不況期には、財務体質が強固な企業は強い、というビジネスのセオリーを改めて思い出した。増して現在は、日本だけでなく、アメリカなど海外の先進国もかなり深刻な状況に陥っているので、誰にでもおいそれとは出来ないグローバルなビジネス展開が出来る企業さんにとっては、なおのことチャンスは大きいと見てよいだろう。
先日このブログで、オンワードホールディングスさんの「ジルサンダー」買収についての速報をご紹介したが、今日の繊研新聞さんに出ていた、同社の廣内武会長、ジルサンダーのジャン・G・フェラリス最高経営責任者(CEO)、グループ内の服飾雑貨の製造メーカー、ジボコーのフランコ・ペネCEOの会見の要旨の中に注目すべき発言があった。
フェラリスCEOが、「セカンドラインを展開する考えは今はない」と明言なさっておられたことだ。
私はこの戦略はすこぶる正しいと思いますね。かつての日本のように、ブランドに憧れ感を持つがファーストラインまでは買えないというヤングのファッション好き中流層が厚ければセカンドラインで儲かる。だが、現在の日本は不況&少子高齢化のダブルパンチで、かつての勝ちパターンは通用しにくくなっている。
しかも「ジルサンダー」の現在のクリエイティブ・ディレクター、ラフ・シモンズ氏は、自身のブランド「ラフ・シモンズ」と、日本の三井物産がバックについているセカンドライン「ラフ・バイ・ラフシモンズ」が存在する。ラフ・シモンズのファンで、若めのデザインがお好きな方はこちらを買うでしょうからね。
細かいことを書き出すときりがないのでこれくらいにしておいて、オンワードホールディングスさんユニクロさん両者の記事を見て感じたことをもう1点だけ挙げることにしよう。
両者共、M&Aなどによる海外の販路開拓に意欲を燃やしておられるようだが、
その一方で、オンワードさんはイタリアのジボ・コー社をうまく活用するという構想をお持ちだし、
ユニクロさんも、生産面に関する「次の手」をしっかりと打っておられるということに注目したい。「ベトナムでの生産拡大を進めるほか、月内にもバングラデシュに生産管理事務所を設立。インドでの生産も検討に入る」(9月5日付け繊研新聞より引用)とのことである。
ここがしっかりしていない企業さんは、輸出以前だと私は思うんですよ。
急上昇してきているコストを抑えるためにも、そして、価格に見合うかそれ以上の付加価値をお客様に提供できるものづくりをするためにも、
自社で主体性を持ったサプライチェーンの構築は不可欠だ。
ファーストリテイリングの柳井正会長が、「ベトナムは生産地として優れているが、ハイテク産業の誘致も進むと見て、『むしろカンボジア、バングラデシュの方が繊維、アパレル産業に向いている』」(9月5日付け繊研新聞より引用)とおっしゃられたようなんですが、鋭い見方ですね。
繊維産業の場合、「比較劣位」にある立地で、「仕組み」を作り、あるいは「比較優位」にある人材=田舎出身で素朴だがキラリと光るところがある者を集めて競争力を高めた者が勝つと思うんですよね。良すぎる国、良すぎる人材がわが業界から去っていくのは早いと見るのは、極めて現実的で正しい見方だと私は思います。
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