「買う必然性」がないのが強みであり弱みー「トーキョーズトーキョー」
さて、昨日羽田空港第2旅客ターミナルで見て来たショップについての感想第1弾、「トーキョーズトーキョー」について、思ったことを書いてみたいと思います。
しかし、比較的近所に住んでいながら、久々に羽田空港に行ったのですが、日曜日の夕方、これから地方へ帰る方、あるいは、地方から東京に戻って来られた方で、来街者数は非常に多かったですね。
午後6時頃の時間だったんですが、ほとんどの飲食店さんが順番待ちの状態になっておりまして、「急いで食べたい方は困られるだろうな」と思った次第であります。
ちょうど数日前、成田空港も通過したばかりで、両者を比較するにはベストのタイミングだったんですが、
・面積当たりの人口密度は、成田よりは羽田の方が圧倒的に高い。
・成田は外国人比率が高いが(へたをすると4割近くは外国人?)、羽田は現時点では基本的にドメスティック。
上記2点の違いがあります。
という訳で、土産物も、
・東京から地方へ仕事や帰省等で向かう
・地方から仕事や親戚宅への訪問、旅行等の目的で上京してきた方が、自宅へ帰る
厳密にいうと、乗り継ぎというのもございますが、基本的には上記2点のいずれかのケースでお買い求めになられる、ということになると思います。
そして、土産物の定番と言えば、
・お菓子や漬け物などの食品(いくら頂いても食べればすぐなくなるので困らない。家族や職場等のみんなで食べる喜びを共有できる。特にお菓子は、多人数に配ることが出来る)
・携帯ストラップ、キーホルダー、ボールペン、小さなポーチ等、単価が低いもの(安いので大人数に配りやすい。頂いた側が趣味に合わないと思っても、心の負担は感じにくい)
・西陣織のネクタイ、籐で編んだかご、焼き物の花器等、単価が高く、付加価値も高いが趣味性の強いもの(自分買い用)
ざっくり言って、上記3タイプに分けることが出来ると思います。
前述した分類は、カテゴリと価格帯の2要素による分類ですが、
続いてテイスト軸、という要素を考えに入れた際に、
「お土産って、何だかキャラクター物とか和調の商品ばかりで、コンテンポラリーなデザインだったり、アート性を感じさせてくれるようなものがないよね」ということになって、
「単価もそんなに高すぎず、自分でも買いたくなるような商品を揃えよう」・・・という発想で出来たのが、この「トーキョーズトーキョー」なのではないかというのが、私の推論です。
(もちろん、ベースとして、国立新美術館の「スーベニアフロムトーキョー」があっての上だと思いますが)。
都市生活者及び、東京という都市に憧れ感を持って上京してこられる知性も感度も高い客層に照準を合わせておられると思いますので、
品揃えからは、時代の空気感を強く感じることが出来ます。
「ユーモア」であったり、「ほっこりする可愛い和」であったり、「ネイチャー(自然)」であったり・・・一昔前のサブカルチャー的な喧噪と知のカオスではなく、肩のチカラを抜いて、ライト感覚で楽しめる、さらには、メンズとレディスの垣根が低くなり、クロスジェンダーな感覚がある・・・そんな良さがあります。
但し、この売り場からは、巧妙にベタベタなナチュラル系とか、ベタベタな和テイストは排除されており(それらは地方に行けば本物がいくらでも味わえますので)、
あくまでもおすまししたきれいな顔の商品だけを取り揃えた・・・そこに編集の妙味があります。
この売り場の目玉は、たぶん壁面を利用した書籍コーナーで、「九州」とか「四国」とか、自分がこれから向かう目的地に合った本を薦めて下さっている・・・「中国」だと今はゲゲゲ本とか・・・本好きの方には喜ばれるコーナーになっているなと思いました。
面白い商品が多いですので、(わが業界関連で言うと、「シキサイ」さんの、蛇口からざーっと水が滴り落ちているTシャツとか、「ステテコドットコム」さんとか、「ジラフ」のネクタイ等々)、
本当に空港での時間待ちには楽しくて良い場所なんですが、
正直、すごく売れている売り場かというと、その辺はどうかなというところがあって、
思うに、「トーキョーズトーキョー」さんで売っている商品って、買う必然性がないものばかりなんですよね。
だから、いいんだ、面白い売り場になっているんだ、ということなんですが、
その点が効率を考えると弱みでもあるのかなと。
この売り場で、売り上げを上げるには、食品を置くのがてっとり早い方法だろうと思いますが、
羽田空港の場合は、純然たる商業施設ではなく、あくまでも空港利用者のための利便性と顧客満足を図るためのスペースだと考えると、
こういう、一見無駄と遊びの多いショップの存在も、
逆に、非常に価値あるように思えて参ります。
来街者数が多いので(しかもどちらかというと飛行機に乗るのは所得が高い層が多い)、
「なんか、無駄だと思ったけど面白いからついつい買っちゃった」という買い方だけでも、
それなりには数字が取れて行くんだろうと思います。
現代の日本は、かくのごとく成熟した国になっているんですよね。
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