美しい工場が作る、美しい服ー(株)ケーエム縫製さんのものづくり
7月某日の黄昏時、
墨田のカイゼン王子こと、
小高莫大小工業(株)の小高集社長と共に、
ファッション業界のカリスマブロガーとして名を馳せておられる
埼玉県八潮市の(株)ケーエム縫製・水谷浩陸社長の元に伺いました。
国際ファッションセンター(株)が今年8月から立ち上げる
ソーシャルweb、ソーシャルメディアについての自主勉強会「ソーシャルメディア部」の
ミニ勉強会の講師をお願いしに伺ったのです。
水谷社長とは、何度も飲み会の席とか、他社さんのセミナーでお会いしたり、
KFCのセミナーにも何度もご参加頂いていたのですが、
会社の方にお邪魔するのは初めてのことでした。
私は、若い頃には岡山の産地の方々にお世話になっておりましたので、
学生服、ユニフォーム、ジーンズなどの量産型の縫製工場さんを沢山見せて頂く機会がございました。
東京に来てからは、カットソーの工場さんも幾つも見せて頂きましたので、
ひょっとしたら縫製専門の新聞の記者さんを除くと、「国内」の縫製工場さんを見学させていただいた数としては、現役の人間では相当経験豊富な部類に入る人間かもしれません。
(残念ながら、私よりも若い世代の方は、海外の工場さんに足を運ぶ機会の方が増えていると思いますので)。
工場の中に足を踏み入れてびっくりすることは、仕掛中の前身頃とか後身頃などの裁断された素材のパーツが、どれもこれも非常に高級素材であること!
「これは、シルク混だな」とか、「これにはアンゴラが入っているな」とか、本当に、ツヤツヤしていたり、フワフワしていたり、じんわりとウール独特のオイリーさ(油分)が感じられたりと、味があります。
こちらもまた、ブロガー、ネットワーカーとして八面六臂の活躍をなさっておられる小高社長は、パチパチと写真を撮りまくっていましたが、
私は、その間、置いてある裁断パーツを触りまくっていました(笑)。
次に、中国や東南アジアなどの工場しかみたことのない方には想像しがたいと思いますが、
1素材当たりの枚数は、もちろん、多くはありません。
20年くらい前の岡山のジーンズ工場さんではで、「1型10万枚いかなければ量ではない」という声が聞かれましたが、そういう生き方とは真逆です。
それが、婦人服のプレタを手掛けておられる都市型の縫製工場さんの特徴です。
2階の生産ラインに置かれている仕掛品や、1階の出荷前の商品の中には、
シンプルなデザインのものもございましたが、
一方で、例えば肩の部分のいせ込みであったり、ポケットなどデザインのディテールであったりがひと味違っているものもあったりして、
そういう、作る側の苦労を感じさせるような製品を見るにつけ、
難素材×難デザイン×すご腕パターン×すご腕工場=高級服
なんだなあと改めて感じました。
このような難しい素材で、立体感やドレープ性をきちんと表現した服を作ろうと思うと、オペレーター(縫製担当者)にも高い技術力が求められます。単純な分業制で効率を上げるという発想の生産管理ではなく、技術者を育てるという観点での教育、人材育成が必要となってくるはずです。
幾つかのミシンの周りには(たぶん、複数台のミシンが1つの班に編成されているのだろうと思いましたが)プロッターで打ち出しされたパターン(型紙)が吊るされており、
スタッフの中には優秀なモデリストが育っておられるのだろうなと思いましたし、
このような高級プレタの工場さんのグレードアップには欠かせない延反機や、裁断機もございました。
ちなみに、カットソー業界とは異なり、ミシンはJ社さんの物が多かったです。
同社をご訪問させて頂いた時間帯は終業時間後だったのですが、残っておられた幹部社員やスタッフの方のご挨拶はいずれも非常に気持ちが良く、
お客様へのご対応には慣れておられる雰囲気を感じました。
ケーエム縫製さんはブログやホームページ、ソーシャルメディアなどでの情報発信に非常に力を入れておられる企業さんで、
ネットを見たクリエーターや新進ブランドさんからの「うちの商品を生産して頂けないでしょうか」といった依頼や、
メディアの取材依頼が絶えない企業さんです。
社内全体で、お客様とのコミュニケーションということを大切に考えて取り組んでおられること、
取り組み続けておられることが、成果につながっておられるのではないかと思いました。
美しい商品は、美しい心を持った経営者と社員の方々が働く、美しい工場で生まれます。
出荷前の商品のブランドネームを見ると、今をときめく人気ブランドさんや、私のおこづかいでは月に1枚買うと他の商品は買えなくなってしまうようなお値段が高いブランドさんのものが揃っていました。
目の肥えたお客様ならば、もちろん、誰の説明がなくとも売り場においてある商品を見るだけで商品の善し悪しはすぐに判別されると思いますが、
ショップで働く方々、アパレルの方々には、ストアブランディング、プロモーション、売り場環境作り、接客、サービスなどを通じて、商品の価値をきちんと伝えていって頂きたい、
東京にこんなに近いところで、人の手によって生み出される美しい服のストーリーを、
最終消費者であるお客様にも理解して頂きたい、
そんな風に、心から思ったのです。
PS.ケーエム縫製の水谷社長、小高莫大小工業の小高社長のブログです。ある中小企業の社長さん曰くは、「読むと元気が出る」。お酒よりもビタミン剤よりも効きます(^^)/
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こんなに立派に書いていただいて
恐縮でございます。
さくらさんの知り合いの工場群は、
弊社など足元に及ばないとても
立派な方々ですから。
兎にも角にも頑張ります!!
追伸...
埼玉県八潮市でございます。
投稿: ミズミズ | 2011年8月 9日 (火) 12時30分
どういたしまして!
ますますのご発展を、心よりお祈りしております(^^)
PS.相変わらずの方向音痴振りを発揮してしまってすみません。住所、お詫びして訂正させて頂きます。
投稿: 両国さくら | 2011年8月11日 (木) 00時08分
初めまして、上田 理沙と申します。
来春に、専門学校を卒業します。
就職するには、こちらで紹介されているケーエム縫製さんのような都市型プレタ工場さんが良いのか、地方量産型の縫製工場さんが良いのか、相談したくて書き込みをさせていただきました。
宜しくお願いします。
投稿: 上田 理沙 | 2013年7月 8日 (月) 23時12分
上田さま、初めまして。
書き込みありがとうございます。
お返事は、新しいエントリーとして書かせて頂きますので、そちらをご覧下さい。
就職活動、頑張って下さい!
投稿: 両国さくら | 2013年7月 8日 (月) 23時57分