展覧会「森と湖の国 フィンランドデザイン」
お正月が明けてから初めての美術館探訪なので、
キラキラして美しく、冬の日に相応しい展示を見たいなと思って、
六本木のサントリー美術館に出向きました。
日本語でのタイトルは、「森と湖の国 フィンランド・デザイン」となっていますが、
英文でのタイトル「GLASS DESIGN from FINLAND the Land of Forests and Lakes」の方が、より正確に展示の内容を表現しております。
展示品は、全て、ガラスの、それも作品というよりも、製品が大半です。
フィンランドのガラスメーカーが、インハウス(社内)の優秀なデザイナーのデザインの力と、工業製品としての優れたガラス器生産のノウハウを車の両輪として、
時代を超えて愛される、美しくて使い勝手の良い製品の数々を生み出してきたのだという歴史が、理解しやすいような、時系列的な展示方法になっていました。
特に、第二次世界大戦末期から、戦後の復興期に当たる、1940年代、50年代の作品が、質・量共に非常に素晴らしいなと思いました。
グンネル・ニューマンによる、カラーの花を模したオブジェ「カラー」(1946年)、
薄いラインが入ったきのこ形のオブジェで、光が当たると非常に綺麗な「カンタレッリ(アンズタケ)3280」(タビオ・ヴィルッカラ作、1947年)、
髭面の太っちょの水脈占い師の姿が浮き彫りにされたデカンタ「水脈占い師」(カイ・フランク作、1946年)等々。
他の製品達、例えば、タンブラーやピッチャーなどを見ても、
繊細な美しさがあり、これがフィンランドらしさなのかな、という風に感じました。
その後、1961年には、フィンランドはヨーロッパ自由貿易連合の準加盟国となり、同国のガラス製品もマーケットを海外に拡大していったようです。
製品の作風が変わり、力強さを帯びたデザインだったり、これは日本の陶磁器の釉薬をかけた雰囲気を真似たのではないかと思える物があったり、イタリアのベネチアに渡ったフィンランド人の作品が登場するなど
カルチャーのクロスオーバーが随所に感じられるようになりました。
それが、その時代の、時代性であり、新しさだったのだろうと思いますが、
反面、交流が少なかった時代の方が、フィンランド独自の文化、美的表現が培われていたようにも感じました。
国際化は、世界を均一にしていく面もあるんですよね。
もう1点、なるほどなと思ったのは、
90年代の前半、同国は深刻な経済不況に見舞われているのですが、
その時代にガラスメーカーの業界再編(企業統合)が起こると同時に、
独立系のクリエーターが多数登場し、
両者が協業あるいは刺激を与え合うことでフィンランドのガラス製品のデザインに新たな展開が見られる、という説明です。
企業に就職できないから独立せざるを得ない、という負の側面もあるのですが、
インディペンダントな立場ならではの自由な発想でのものづくりの萌芽も感じられ(アート風の作品も幾つか展示されていました)、
小さな単位に帰ることから、産業と文化の再生が始まるんだろうなという希望を感じました。
展示作品の中で最も目立っていたのは、オイヴァ・トイッカの「鳥」シリーズです。
1点でも愛らしく美しいですが、沢山並ぶと、群としての美しさが生まれて、とても素敵でした。
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