エシカルコンシューム(倫理的消費)時代にマッチした2つの見本市ーててて見本市とCCJクラフト見本市(後編)
しかしながら、この2つの展示会に限らず、
最近はライフスタイルを軸にしたクラフト系、伝統工芸系の商品は、
他の展示会の中でも非常に増えて来ていて、
ギフトショーはもとより、
本来はファッションの展示会だったIFFとか、
あるいはroomsにまで、前回から「地場産業」というくくりで登場するようになっていて、
短期的なブームとしては、もうかなりピークに近づいてきているのではないかという気がします。
アイテム、カテゴリーによって競合状況は異なるんですが、
例えば食器のような分野では、
外部デザイナーを起用し、文様や意匠を一切施さず、白などの無地を基調にしたシンプルなデザインの器を・・・というのは、
ゼロ年代の初め頃にはまだそこまで普及していなかったように思いますが、
現在では全国どこの産地でもやっていて、珍しくも何ともないものになっているように感じます。
それでも、ベーシックなデザインのものは、お料理を盛りつけた時にどんな色合わせになっていても映えますし、
沢山の器を所有できない、という人にとっては使い勝手がよいので、
一番売れ筋なのだとは思いますが。
本来的には、デザインというのは、
消費者が既存の商品の機能に対して感じている不便や不満を解決するものであったり、
既存の商品とは異なる新しい美的価値を呈示するものであるべきだと思いますが、
前者の機能面に関しては、長い歴史の中で培われて来た完成された形にはそれなりの合理的な意味があって、なかなか簡単にそこを変える、というのは難しいのだろうという風に思います。
その点、やはり、「衣」に近い部分というのは、
後者の「美」という要素が強いカテゴリーですので、
お客様は何点商品を所有していても気に入ればいくらでも追加購入するものですし(こういう生活態度は、本当はエシカルな生き方とは矛盾するかもしれないのですが)、
人によって似合うものは全く異なりますので、
デザイナーが腕を振るえる部分が非常に大きく、デザイナーは定番をひととおりデザインしてしまったら暫くは仕事はなし、などということはなく、春夏秋冬年中次の新作の準備に忙しい・・・ということになります。
テキスタイルに関してだけは私自身がある程度目が肥えてしまっている部分があるのか、正直なところ、
こういった展示会で例えば草木染めの天然繊維を手機で織ったストールです・・・といったタイプの商品を見ても、
確かに、そのエコロジカルな考え方には共鳴する部分がなきにしもないのですが、
例えば、「ファリエロ・サルティ」というイタリアのストールのブランドさんは、
最近は無地とか単純なグラデーションのストールだけでなく、ユーモラスで楽しいイラストがプリントされたプリント柄のストールを沢山投入していますし、
最近発表された「エルメス」と(「コムデギャルソン」のデザイナー)川久保玲氏のコラボ・スカーフの素晴らしい意匠を見てもそうなんですが、
上質な素材をセレクトし、織り、染め、そして刺繍や後加工の技術を駆使して、
複雑で味わい深い美を表現した商品の魅力にはかなわないんじゃないか、と思ってしまいます。
引き算の美だけでなく、足し算の美も表現できるかどうか、
そこが、クラフト作家と呼ばれる方々と、
ファッションデザイナーの違いなのではないかと思います。
いずれにしても、エシカルコンシュームの流れは、一時的なブームではなく、このヤマが去った後谷の時期が到来しても一定の安定的な勢力としてずっと続いていくと私は思っています。
「住」「食」の分野と異なり、この流れは「衣」に関しては、「無印良品」さんと「ユニクロ」さんを大きく後押しするものになっていくと思いますので(実際、若い社会起業家などに話を聞くと、この2ブランドが好き、良いイメージがあるという声が多いです)、
日本のファッションカルチャーの多様性が保てなくなってしまうんじゃないかなと、ちょっと危惧しています(「無印良品」さんも、「ユニクロ」さんも、世界的に通用する新たな価値の呈示を行っているブランドさんで、非常に素晴らしいとは思うんですが)。
中小の企業がエシカルを謳うならば、大手とは異なるどのような価値を呈示できるのか、真剣に追求する必要があるように感じました。
CCJ見本市さんの方には、最終日の土曜日(10日)のラスト1時間ほどの時間帯に駆け込んだのですが、会場に置かれていた書籍がほとんど完売していたのが印象的でした。
最近はイタリアがマイブームですので、会場に残っていた本の中から、
多木陽介著『アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン』(AXIS刊)を買い求めて家路に就きました。
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